皆さん、こんにちは。千原です。

争う相続をなくすために知ってほしい民法906条の話をします。

民法906条とは?

民法906条(遺産の分割の基準)

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。


つまり、遺産の種類が何なのか、土地であれば宅地なのか農地なのか、建物であれば自宅なのか貸家なのか、はたまた借地権利なのか。金融資産であれば、預金なのか有価証券なのか。そして、相続するだろう人は何歳で、職業は何で、健康状態や生活力などはどうなのか。性別や婚姻の有無、被相続人との付き合い方はどうだったのかなど、総合的に勘案して、公平に、かつ適切に行わなければならないと書かれているのです。

仮に家業を継ぐ相続人であれば、その事業に必要な財産を相続させ、ほかの相続人にはそうではない財産を分配するなど、諸般の事情を考慮して遺産分割をすべきであるといった内容が定めてあるのです。

よくあるケース

例えば会社経営者のお父様が亡くなり、残された家族はお母様と子ども3人だとします。長男は家業を継いでいるため、事業で使っているお父様名義のビルを相続したいと考えますが、それでは相続する分が平等でないと、他の兄弟から不満が出てしまうケースがあります。

この場合でいう他の兄弟がよく口にするのが「法定相続分に分けるべきだ」というセリフ。しかし、先程の民法906条で考えたら、そうとは限らないですよね。

お気づきになりましたか。遺産の分け方は、「法定相続割合が基準」ではないのです。

争う相続を増やさないために

裁判などで遺産分割をすることになった場合に、これらの事情を客観的に判断することが難しいことが多いので、民法900条に規定された「法定相続分」で分割することとなり、いつのまにか、遺産分割は「法定相続分で分ける」のが当たり前と考える人が多くなってしまったようです。

しかし本来、この民法900条に定められた「法定相続分」とは、遺言による相続分の指定がないときなどに、補助的につかわれる規定でしかないのです。

「家督相続」の時代は、相続財産をもらうためには当然、両親やきょうだい達の面倒も見るという、権利と義務の関係が成立していました。

しかし「平等相続」の時代になってからは、権利ばかりを主張し、肝心の「義務」については見ないふりをするケースが多く、争う相続の要因になってしまっているようです。

民法が規定した「平等」という意味をはき違えてしまわないよう、民法に書かれた本当の規定を知ってほしいと思います。

残された家族が争うことのないよう、まずは「遺言」で家族への思いを残すことが大切です。